■■■ 糖尿病治療薬服薬指導 【疾患名】MP 糖尿病(Diabetes) 【有病率】HI 約1% 【好発層】HI IDDM40歳以前@@NIDDM40歳以後の肥満者 【予後】MP 食事,運動,薬物による適切な管理で進行は阻止可能 【概要と成因】 MP (概要)糖尿病はインスリンの作用不足によって起こる代謝異常で環境要因と遺伝 要因の相互作用によるインスリンの絶対的・相対的な不足に基づく高血糖 の状態をいう.糖尿病は現在でも完全治癒が難しく,罹病期間が長くなる と多彩な合併症(網膜症,腎症,神経障害,脳血管障害,虚血性心疾患な ど)を惹起するので,成人病の大半は糖尿病との関連性が大きい.   (成因)T型糖尿病:ウイルス感染や自己免疫機序による膵島の障害と考えられて いる       U型糖尿病:遺伝的素因と考えられている 【分類と症状】HI MP  (分類)   @インスリン依存型糖尿病(T型糖尿病)    [IDDM:insulin dependent diabetes mellitus]   Aインスリン非依存型糖尿病(U型糖尿病)    [NIDDM:non insulin dependent diabetes mellitus]   Bその他(二次性糖尿病)   C妊娠糖尿病(GDM)  (症状)   @口渇・多飲・多尿→細胞外液の浸透圧の上昇,浸透圧利尿   A全身倦怠感・疲労感→代謝異常によるエネルギー産生障害    B多食→満腹中枢の興奮性低下,食欲中枢の興奮性亢進   C体重の増減→異化の亢進で減少,過食で肥満┥ 【治療薬物の分類と特徴】MP DJ   (注意)治療の基本は食事療法と運動療法で,軽症のNIDDM(NIDDMの30%程度)は ,十分にコントロールできる.しかし不十分な場合はこれらに加えて薬物 療法が行われる.IDDMは原則としてインスリン療法が必要である.    薬物療法   A:経口血糖降下剤療法           B:インスリン療法   A:経口血糖降下薬  〔第一世代SU剤〕       <特徴:作用時間(hr)>   @トルブタミド      500mg インスリン分泌促進   8〜12   Aアセトヘキサミド 250mg、500mg インスリン分泌促進  10〜16   Bクロルプロパミド     100mg インスリン分泌促進    60  〔第二世代SU剤〕   Cグリベンクラミド 1.25mg、2.5mg インスリン分泌促進  12〜18   Dグリクラジド   40mgインスリン分泌促進   8〜16                    血管増強作用  〔ビグアニド剤〕   Eブホルミン    50mg 6〜14          SU剤が効果不十分か副作用で使用不可の時に限る.          膵臓には作用せず,末梢組織や肝臓における嫌気性解糖の促進およ び糖新生の抑制作用  [コメント]   グリベンクラミドの出現を機会に,第一世代と第二世代の別ができた.   第二世代の特徴は,    @使用量がきわめて少量である    A血糖低下作用以外の作用(ナトリウム排泄やアルコール耐性などに対する作用 )が少ない    B薬用量と中毒量の差が大きい    C血清タンパクとの結合率が小さいので他剤併用による思わぬ低血糖の増大が防 止できる   などの特徴を有する.またビグアニド剤はSU剤ほど効果は確実ではなく,SU剤 と併用することが多く,あくまで二次的な薬剤である. B:インスリン   内因性インスリンの不足(量,作用)に対する補給             作用時間(hr)皮下注時  |商品名  種  単位 発現 最大 持続備 考  |@ペンフィルR ヒト  100@  0.5  2.5-5 8@ ノボペン専用 速|AアクトラピッドH ヒト 40、100 0.5 2.5-5 8  |BヒューマリンR  ヒト  40、100 0.5-1 3-5   3-8  |Cノボ・アクトラピッド ブタ 40 0.5 2.5-5 8 効|Dイスジリン        20、40  0.5-1 3-5 3-8       | 準|Eノボ・セミレンテ  ブタ  40   1.5  5-10  16        速| 二|Fノボ・ラピタード ブタ/ウシ 40  0.5 4-12  24  |Gノボリン30R40  ヒト   40 0.5 2.5-12 24 相|Hペンフィル30R   ヒト 100 0.5 2.5-12 24 ノボペン専用  |IモノタードH   ヒト  40、100 2.5 7-15  20-24      中|Jノボ・モノタード  ブタ  40   2.5  7-15  20-24       |Kノボ・レンテ   ブタ/ウシ 40   2.5 7ー15  24         |LヒューマリンN   ヒト  40、100 1ー1.5 8ー12  22  |MNPHイスジリン 40                  間|NノボリンN    ヒト   100   1.5 4-12 24        |OペンフィルN    ヒト 100   1.5 4-12 24  ノボペン専用 | 持|Pノボ・ウルトラレンテ  ウシ  40   4  10ー30 36        続|QノボリンU    ヒト  40、100@4  8ー24  24ー28      | |  | 【禁忌の薬(理由)】 IR @キシロカイン  →末梢血管に壊死を起こす,血糖上昇作用有り   Aベコナーゼ   →肝臓で糖新生を促進,末梢で糖利用を抑制   Bリノコート   →血糖コントロールが困難になる可能性有り   Cヒト成長ホルモン→血糖上昇作用有り,糖尿病を誘因する作用有り   Dエサンブトール →視神経炎,末梢神経炎の増悪の可能性有り   Eヘパリン    →血管や内臓の障害部位に出血を起こす   Fワーファリン  →血管や内臓の障害部位に出血を起こす   Gエレンタール  →糖(デキストリン)が多く含まれる   Hイントラリピッド,イントラリポス→IR/258ページ参照 【合併症と対策】 CT @眼合併症 調節障害,糖尿病性網膜症,白内障・・・視力障害    〈対策〉 レーザー光線による光凝固(前増殖期)   A腎合併症 糖尿病性腎症,ネフローゼ・・・高血圧,浮腫,尿毒                       症症状    〈対策〉 潜在期:高血圧=降圧剤(β遮断剤,Ca拮抗剤)         ネフローゼ期:浮腫=フロセミド         腎不全期:透析   B神経障害 1:瀰漫性左右対称性神経障害[代謝異常が原因]          A:多発性神経障害・・・しびれ,神経痛          B:自律神経障害 ・・・アキレス腱反射消失,インポテンツ,便通 異常,排尿障害    〈対策〉 痛み=鎮痛剤         2:単一性神経障害[血管閉塞が原因]          A:脳神経障害        ・・・外眼筋麻痺          B:躯幹,四肢の神経障害   ・・・尺骨神経麻痺など   C感染症  尿路感染,皮膚や軟部組織の感染・・・・発熱,体重減少,食欲不振    〈対策〉 抗菌剤,感染原因を取り除く 【生活指導】 MP @食事療法,運動療法の遵守   A低血糖を起こした場合の注意    B注射器の使用方法    C注射部位の説明 【薬物療法以外の特記すべき治療法】(治療薬物の分類と特徴を参照) MP @食事療法 標準体重と生活活動強度から適正なエネルギーを算出し食品交換表に より食事を決定   A運動療法 適正なエネルギーに基づいた運動を行う 【疾病に対する注意すべき臨床検査】 MP @糖尿病のコントロール基準               コントロール    指 標 優        良       空腹時血糖(mg/dl)     70〜120   <140   食後2時間血糖(mg/dl)   <180     <200   空腹時尿糖         (−)      (−)〜(+)   食後尿糖          (−)〜(+)  (+)    #1 血中フルクトサミン(μmM/l)    200〜280  <350   HbA1(A1C)%   <8%(6%) <9%(7%)   血中総ケトン体(mM/l)        <120     尿ケトン体              (−)   血中コレステロール(mg/dl)      <220     血中トリグリセリド(mg/dl)      <150     体重          標準体重±10%   A外来診療上必要な検査項目と望ましい頻度    検査項目    検査頻度        血糖(空腹時,食後)        月1〜2回 ただし自己測定では毎日   血糖(日内変動)          自己測定で月1回   体重,血圧             月1〜2回   尿糖                自己測定で毎日   尿蛋白,沈渣,ケトン体       月1〜2回   HbA1(A1C),フルクトサミン   月1〜2回   ケトン体(アセト酢酸,3ヒドロ   月1〜2回        キシ酪酸)   脂質(コレステロール,HDLーコレ   3ヶ月に1回    ステロール,トリグリセリド)   肝機能               3ヶ月に1回   腎機能(クレアチニン,尿素,    3ヶ月に1回      Crクリアランス)   眼底検査              1年に1〜2回   振動覚(可能なら神経伝導速度)   1年に1〜2回   心電図               1年に1〜2回   胸部X線       1年に1回        【用語】 MP @slowly progressive IDDM:近年注目されている発症のゆるやかなIDDM   AGTT:ブドウ糖負荷試験   Bフルクトサミン:グルコサミンのオサゾンを還元して得られるアミノ糖類   Cインスリン強化療法:1日複数回の注射により,血糖の厳格なコントロールを維 持する療法   DSick day対策:インスリン療法を行っている患者が急病にかかった場合 ,糖尿病の病状にどのように対応するかということ   EHbA1 :グリコシルヘモグロビン HbAのβ鎖N末端アミノ基にグルコース が結合したもので,長期血糖値の指標となる 【メモ】 【参考文献】 #1 フルクトサミンの単位が変更 平成2年6月1日より   mM/l → μmM/l 〔金大の検査部に確認〕