■■■ 感染性心内膜炎服薬指導 【疾患名】MP 感染性心内膜炎(CP Infective Endocarditis) 【有病率】MP 【好発層】## 性差なし 【予後】 HI @未治療の感染性心内膜炎が回復することはまれ.適当な抗生物質治療により自然 弁感染患者の70%以上,人工弁感染患者の50%以上が生存.   A予後を不良とする因子 ##    心不全の存在,高齢者,弁機能障害のあるもの,多細菌性菌血症の存在,病原菌 の同定ができない場合,非中毒性殺菌性薬物に対する抵抗性,治療開始の遅れ.   B人工弁でグラム陰性細菌,真菌によるもので急性心内膜炎型をとるものが最も予 後不良. 【概要と成因】  〈概要〉 MD 心室中隔欠損症や動脈管開存症などの先天性あるいは後天性の器質的基礎心疾患が 素地となり,その障害部位の心内膜に病原菌が定着して発症する. MP 心内膜や弁膜の細菌ないし真菌,リケッチアの感染.  〈特徴〉@緑連菌や腸球菌等の病原性の低い細菌によるものが多い.      A心内圧の較差が大きい部位に生じやすい.      B治療に当たって大量の抗生物質の長期投与を要する.      C場合によっては感染した弁膜の切除,弁置換術を要する.   感染性心内膜炎の原因となる菌血症の誘因    抜歯,せつ,扁摘,カテーテル手技,手術,血液透析など  〈成因〉 HI 循環動態上の変化により心内膜表面上に形成された疣贅(血小板,フィブリンから なる)に,循環中の細菌が沈着することにより発生. 【分類と症状】 HI 〈分類〉   @亜急性感染性心内膜炎    1.毒力の弱い細菌(緑色連鎖球菌,ジフテロイド菌,表皮性ブドウ球菌等)    2.感染の開始が新しい抜歯,尿道器具,扁桃摘除,急性気道感染,堕胎と関連.    3.衰弱,疲労感,体重減少,熱感,夜間発汗,食欲不振,関節痛.    4.塞栓が麻痺,心筋梗塞,肺梗塞による胸痛,四肢の痛みを伴う急性末梢血管障 害,血尿,急性腹痛,突然の失明を来すことがある.##    5.指趾の痛み,有痛性皮膚病変.    6.皮膚粘膜病変(点状出血(口腔,咽頭,結膜の粘膜),爪下線状出血)    7.末梢動脈の塞栓(Osler結節,壊疽)    8.太鼓ばち指,軽度の黄疸    9.心臓所見(収縮期雑音の変化と新しい拡張期雑音) ##    10.脾腫   11.関節痛,急性リューマチ熱に似た関節炎   12.塞栓現象.片麻痺,血尿を伴う腰痛,下血を伴う腹痛,胸膜炎様の痛みと喀血 ,脾性摩擦音を伴う左上腹部痛,失明の突然の発生や発熱,心雑音を有する患 者での単麻痺.   A急性細菌性感染性心内膜炎    1.化膿性感染(肺炎球菌性髄膜炎,敗血症性血栓性静脈炎,A群連鎖球菌性蜂窩 織炎,ブドウ球菌性膿瘍)が心内膜炎に先行.    2.亜急性感染はほとんど器質的心疾患があるものにみられるのに対し,急性心内 膜炎では器質的心疾患を有しないものにもみられる.静脈内薬物使用者および 既往に発見されなかった大動脈弁の異常を有する者に多い. ##    3.経過は電撃性で急性.発熱はしばしば高く,間欠性.悪寒戦慄,点状出血,著 名な塞栓現象.Roth斑点.Janeway斑点.腎塞栓障害時に血尿.びまん性糸球 体腎炎.   B右心性心内膜炎    1.黄色ブドウ球菌が単独の菌としては最も多い.    2.非経口的薬物中毒者では三尖弁が最も普通に侵される部位.    3.臨床症状は急性心内膜炎に肺梗塞と膿瘍形成を伴った所見を示す.    4.数週間にわたる高熱,胸膜炎型の胸痛,喀血,喀痰,労作時呼吸困難,全身倦 怠,食欲不振,易疲労性.    5.予後は比較的良好.   C人工弁心内膜炎     1.弁置換1年後の患者の2〜3%に発生.感染の約1/3は手術後2ヵ月以内に 起こる.    2.術中の弁または縫合部位での菌増殖のため起こる.    3.敗血症性ショック,弁の裂開,心筋浸潤のために高い死亡率を示す.    4.自然弁の感染と鑑別できない症候を呈するが,弁裂開を生じる弁輪の一部又は 全部を侵す弁輪の感染や心筋および周囲組織への侵入を来す頻度がより高い. 【治療薬物の作用機序と分類】 MP 抗生物質投与の原則    @十分な量(MICの6〜10倍濃度)    A十分な期間(4〜6週間)    B殺菌性抗生物質の選択    C非経口的投与    Dなお点滴静注に当たっては,ペニシリンNaは循環血液量を増加させ,心不全 を更に憎悪させる危険性を有するので注意が必要. ##   抗生物質は起炎菌に応じて選択(特に記載の無い場合は静脈内投与)    1.ブドウ球菌     A.メチシリン感受性      @メチシリン(DMPPC),オキサシリン(MPIPC),       クロキサシリン(MCIPC) 1.5-2.0gを4h毎     Aセファロスポリン系 1.5-2.0gを6h毎      B(難治性の場合)上記にストレプトマイシン(SM 0.5g,im,12h毎),または ゲンタマイシン(GM),またはトブラマイシン(TOB)(3-5mg/kg/d分2-3)を加 える.     B.メチシリン非感受性      感受性試験に従って選択. セフメタゾール(CMZ)+フォスフォマイシン(FOM )が有効. ##   ブドウ球菌は毒力が強く,各臓器にクラスター(cluster:ブドウの房のよう なもの.この中に細菌がある.)を形成する危険性があり,従って一定の期間 ,効果がなければ速やかに弁置換術を施行しなければならない.    2.連鎖球菌     A.ペニシリン感受性(MIC<0.2μg/ml)     ペニシリンG(PCG 2000万単位/d,分4-6) ± ゲンタマイシン(GM)     B.比較的ペニシリン非感受性(MIC>0.2μg/ml)      ペニシリンG(PCG 2000万単位/d,分4-6) + ゲンタマイシン(GM)    3.腸球菌    @ペニシリンG(PCG 2000-4000万単位/d)   Aアンピシリン(ABPC 12g/d) + ゲンタマイシン(GM)    4.大腸菌,クレブシエラ,変形菌    @アンピシリン(ABPC 12g/d) Aゲンタマイシン(GM)     Bセファロスポリン系(8-12g/d)    5.緑膿菌    @トブラマイシン(TOB) + チカルシリン(TIPC 3g, 4h毎)     Aピペラシリン(PIPC 4g,6h毎)    6.嫌気性菌    @ペニシリンG(PCG 2000万単位/d) Aリンコマイシン(LCM 0.6g, 8h毎)  Bクリンダマイシン(CLDM 0.6g, 8h毎)    7.真菌(真菌性心内膜炎は最も予後が不良)     @ミコナゾール(MCZ 0.2-1.2g, iv) + 5-フルシトシン(5-FC 150mg/kg/d, po)     AアムホテリシンB(AMPH 1-1.5mg/kg/d, iv) + 5-フルシトシン(5-FC 150mg/ kg/d, po)治療開始より1週間後に人工弁置換術.術後さらに6〜8週間治 療.    8.菌が同定されない場合     ペニシリンG(PCG 2000-4000万単位/d) + ゲンタマイシン(GM) 【禁忌の薬(理由)】 IR 〈感染症〉   @プロピオン酸ベクロメタゾン(ベコナーゼ, アルデシン, リノコート, ベコタイ ドインヘラー)    (抗体産生抑制,免疫機能低下作用 → 菌交代現象)   Aヒドロコルチゾン(コートリル) (免疫機能抑制)   Bインスリン(レセプター感受性低下により効果が一定しない.メカニズム不明)   Cグリベンクラミド(ダオニール)(糖尿病患者の代謝調整は感染を機に急速に悪化 しコントロール困難になりやすいといわれている。) 【合併症と対策】 CP 腎不全(亜急性患者)   中枢神経系障害(全患者の1/3)→発作,出血,(まれ)髄膜炎,中毒性脳疾患 ,単神経炎,けいれん,視覚損傷→失明   肺塞栓,弁機能不全によるうっ血性心不全 ##   弁置換時→重篤な心疾患,抗菌薬に抵抗性の感染菌の存在,感染された人工弁の不 安定性 【生活指導】MP 【薬物療法以外の特記すべき治療法】 MP 外科治療(感染した弁膜の切除,弁置換術) 【疾病に対する注意すべき臨床検査】 MP 軽度の貧血,白血球増多,核左方移動,血沈の亢進,CRP陽性,ガンマグロブリ ン・IgM・IgG増加,RA陽性.心エコー図では基礎心疾患の診断,疣贅の発見のほ か,弁の穿孔,破壊部位の診断にカラードップラー(心エコー)法が役に立つ. 【疾病に関する用語】 MD 疣贅:硝子様に見える小血栓で,白血球,赤血球,血小板,繊維素からなる.   Osler結節:細菌性心内膜炎の患者の手足の指の掌側に生じる,紅斑様あるいは青 みがかった有痛性の小結節.   太鼓ばち指:指趾の末節が球状,紡錘状に膨大している状態.   Roth斑点:敗血症の際に網膜にみられる白斑.周囲に網膜出血を伴いやすい.   Janeway斑点:急性または亜急性心内膜炎の患者の手掌や足底,指先などに認めら れる小紅斑様または出血性の無痛性結節のこと. 【メモ】 【参考文献】 ## Doctor's Advice